イランとイスラエルの軍事衝突の激化は世界市場に大きな混乱をもたらしており、製造業も生産コストと物流コストの上昇、輸出需要の弱まりというリスクに直面しています。世界第4位の人口を持ち、東南アジア最大の経済であるインドネシアは、世界のエネルギー・食料価格の変動や原材料のサプライチェーンの混乱の影響を非常に受けやすい国です。
イラン・イスラエル紛争の直接的な影響が最も顕著なのはエネルギー市場で、世界の生産の約30%を占める主要産油地域としての中東の存在が、市場の警戒を招いています。日量320万バレルに達するイランのエネルギー生産が混乱すれば、供給が途絶え、国際エネルギー市場の価格が変動します。ブレント原油価格はイラン・イスラエル戦争後、1バレル73〜92ドルの間で変動しており、アナリストは2025年に15〜20%上昇する可能性を警告しています。世界のエネルギー供給の大動脈であるホルムズ海峡の封鎖の脅威が浮上したことで、世界のエネルギー価格の変動もさらに大きくなっています。
アグス・グミワン・カルタサスミタ工業大臣は、イラン・イスラエル戦争が産業に及ぼすリスク、特に原材料や生産の投入要素としての輸入エネルギーへの国内産業の依存を緩和することの重要性を強調しました。また、原材料や工業製品の輸出の物流ルートが現在公然と紛争が起きている中東を通るため、世界のサプライチェーン、特に産業原材料のサプライチェーンの混乱に備えた対策も必要です。さらに大臣は、生産投入物の価格上昇と工業製品の輸出競争力の低下を招く為替レートの変動に対するイラン・イスラエル戦争の影響についても、製造業に対策を講じるよう呼びかけました。
大臣によると、エネルギーは産業にとって生産のエネルギー源であるだけでなく、生産工程の原材料でもある極めて重要なものです。「そのため、国内産業には生産工程でのエネルギー使用をより効率的にするよう求めています。さまざまなエネルギー源をより効率的に使うことで、工業製品の生産性と競争力を高められます。これはプラボウォ大統領が掲げる国のエネルギー主権を支えることにもなります」と、6月17日(火)、ジャカルタでの公式声明で強調しました。
さらに工業省は、事業者がエネルギーを効率的に使うだけでなく、生産に用いるエネルギー源を多様化するよう促しています。長期化する地政学的紛争のなかで、特に中東からの輸入化石エネルギーへの依存はますますリスクが高まっているため、これは極めて重要です。
「国内産業は、バイオエネルギーや地熱などの新・再生可能エネルギーを含む国内のエネルギー源に頼り始め、産業廃棄物を代替燃料として活用しなければなりません」とアグス大臣は付け加えました。
工業省はさらに、発電機械、エネルギーインフラ、再生可能エネルギーの関連部品など、国のエネルギー安全保障プログラムを支える製品を製造業が生産するよう促しています。
食品分野についてアグス大臣は、イラン・イスラエル戦争が世界経済に及ぼす間接的な影響への戦略的な対応として、農産品の川下化が急務であると指摘しました。この紛争は国際物流コストの急騰、世界的なインフレ、インドネシアを含む新興国通貨に対する米ドル相場の変動を引き起こしています。
「物流、インフレ、為替という3つの要因は、輸入原材料と食品の価格を直接押し上げます。だからこそ答えは国内食品の川下化です。わが国の産業は、輸入食品原料に依存し続けないよう、国内の農業、農園、漁業、林業の産物を加工する役割を担わなければなりません」と工業大臣は説明しました。
アグス大臣は、国内製造業は食品を生産するための農業分野の川下化に注力するだけでなく、より効率的な食品生産技術を見いだすイノベーションにも積極的に取り組み、国内でより高い付加価値を生み出すことを目指すと強調しました。食料安全保障と食料主権を実現するための農産品の川下化はプラボウォ・スビアント政権の優先プログラムでもあり、製造業はその目標の達成に貢献しなければなりません。
工業大臣はまた、生産投入物のインフレに対応するため、LCS(現地通貨決済)制度を活用するよう国内産業に呼びかけました。産業界はインドネシア銀行(BI)のこの制度を活用して、イラン・イスラエル戦争が外貨、特にインドネシアとLCSを締結した国の通貨に対するルピア相場の変動に及ぼす影響に備えることができます。
グローバル・サプライチェーン
この危機は、特にインドネシアの製造業にとってのグローバル・サプライチェーンの脆弱性も浮き彫りにしました。世界の石油輸送の30%を担うホルムズ海峡や、世界貿易の10%が通るスエズ運河など、重要な海上交易路が混乱の危険にさらされています。最近の商船への攻撃により、アフリカの喜望峰経由への航路変更を余儀なくされ、アジア・欧州間の輸送日数が10〜15日延び、コンテナ費用は150〜200%上昇しました。
こうした混乱はインドネシアの多くの産業分野に影響を与えています。例えば、生産の65%を輸入部品に頼る自動車・電子産業は、納期が最長26週間に及ぶ半導体不足に直面しており、5億ドルの輸出損失が生じるおそれがあります。
さらに、主要な輸出産業の一つである繊維・履物産業では、物流コストの上昇で利益率が5〜7%縮小し、ベトナムやバングラデシュなど地域の競合国に対する競争力が低下しています。一方、世界のエネルギー転換に重要なインドネシアのニッケル・鉄鋼部門は、石炭輸送費の15〜20%上昇と3〜4週間の出荷遅延に直面しており、12億ドルの輸出損失のおそれがあります。
この紛争は、紛争リスクの高い地域への依存を減らそうとする西側経済による「フレンドショアリング」など、懸念される世界貿易の流れも加速させています。インドネシアは電気自動車用電池の世界需要の40%を占める豊富なニッケル埋蔵量から恩恵を受ける可能性がある一方、輸出企業の遵守コストを8〜12%押し上げかねない欧州連合の炭素国境調整メカニズム(CBAM)などの貿易障壁にも向き合わなければなりません。
食料安全保障も懸念されています。インドネシアは肥料やリン酸塩などNPK系の肥料原料を輸入しており、その推定約64%は中東地域の戦略的な位置にあるエジプトから来ています。エジプト以外にも、他の中東諸国から少量の肥料原料を輸入しています。これらの国からの輸入量は比較的少ないものの、地域で紛争が起きた場合の潜在的な影響は依然として大きいものです。
工業省はまた、中東紛争を川下化と国内産業の自立を強化する戦略的な好機と捉えています。「世界的な課題のなかでこそ、インドネシアが海外の原材料やエネルギー・食品への依存を減らす余地が生まれています。川下化は経済的な付加価値だけでなく、インドネシアのエネルギー主権と食料主権にも関わるものです」とアグス大臣は強調しました。
大臣によると、政府はインセンティブ、投資の円滑化、財政政策などの形で引き続き支援を行い、より効率的で競争力の高い産業への転換を加速させます。
「食料とエネルギーの安全保障は一次産業だけでなく、産業部門の責任でもあります。そしてインドネシアの製造業は、その実現の最前線に立たなければなりません」と強調しました。この戦略により、工業省はインドネシアが産業部門と経済全体の安定を保ちつつ、さまざまな世界的圧力に対する国の強靭性を高められることを期待しています。
出典:インドネシア共和国工業省プレスリリース
